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東京高等裁判所 昭和32年(行ナ)12号 判決

原告 横井昇一 外一名

被告 株式会社岡田台紙店 外二名

主文

原告等の訴を却下する。

訴訟費用中、原告横井昇一に関して生じた部分は、同原告の負担とし、その余の部分は、原告川又元男、訴訟代理人進藤寿郎、日野勲、進藤誉造の負担とする。

事実及び理由

本件訴訟記録及び特許庁が意匠法第二十五条、特許法第百二十八条の四第二項の規定により当裁判所へ送付した意匠登録無効審判請求事件の記録によれば、原告両名は登録第九五四〇六号意匠の権利を共有するものであるところ、被告株式会社岡田台紙店は、昭和二十六年十二月二十四日右意匠の登録は、意匠法第一条、第三条第二項に違反したものであるとしてその無効の審判を請求し(昭和二十六年審判第三三〇号事件)、特許庁は右請求を理由ありとして、昭和二十八年一月二十八日右意匠登録を無効とする旨の審決をなした。原告等は同年三月十一日右審決に対し抗告審判を請求したが(昭和二十八年抗告審判第三五七号事件)、右抗告審判事件の係属中被告株式会社三洋商会、同株式会社青々社は、右抗告審判に参加を申し立て、その参加は昭和三十一年四月十一日許可された。特許庁は右当事者間の抗告審判請求事件について、審理を遂げ、昭和三十二年二月十二日「本件抗告審判の請求は成り立たない。」との審決をなした。

本件訴訟は、原告訴訟代理人進藤寿郎、日野勲、進藤誉造が、原告横井昇一及び川又元男の訴訟代理人として、「特許庁が昭和二十八年抗告審判第三五七号事件について、昭和三十二年二月十二日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告等の負担とする。」との判決を求める趣旨を記載した訴状を当裁判所に提出したものであるが、該訴状には、原告横井昇一の前記訴訟代理人等に対する訴訟委任状が添付されているだけで、原告川又元男の訴訟委任状は存在しない。よつて当裁判所は昭和三十三年四月一日前記訴訟代理人等に対し、同原告の代理権を証する書面を十四日内に提出するよう補正を命じたのにかかわらず、右訴訟代理人等は今日にいたるもなおこれが補正をしないものである。

すなわち原告川又元男の本件訴訟については、前記訴訟代理人等において適法に同原告を代理して訴訟行為をなすべき代理権の証明がないものであるから、同原告の訴は不適法として却下するの外なく、これによつて生じた訴訟費用は、同訴訟代理人等の負担すべきものとする。

次いで原告横井昇一の本件訴訟についてみるに、登録意匠の登録の無効は、その共有権者の全員について合一にのみ確定すべきものであつて、これを無効とする抗告審判の審決に対する不服の訴は、無効審判において共同被請求人(抗告審判においては、抗告審判請求人)であつた該意匠権の共有権者原告両名が、共同訴訟人としてこれを提起することを要するものと解せられるところ、原告川又元男の訴の提起が不適法であつて却下すべきことは前段に掲げたとおりであるから、原告横井昇一の訴も、その要件を缺き不適法に帰したものといわなければならない。よつて同原告の訴もこれを却下し、該部分について生じた訴訟費用は、同原告の負担とすべきものとする。

よつて民事訴訟法第二百二条を適用して主文のように判決した。

(裁判官 内田護文 原増司 入山実)

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